Motorcycle Information 2016年7月号(日本自動車工業会)
熊本地震と二輪車
震災下でバイクはどう使われたか
オフロードバイクをフル活用した山都町役場
日本有数のツーリングスポットとして全国のライダーから愛されている阿蘇地方は、現在、崩落した阿蘇大橋(国道325号)や俵山トンネル(県道28号)など全面通行止めの区間が残っており、阿蘇山の頂上方面へはアクセスできない状態だ。
熊本県山都町は南阿蘇村の南側に位置し、今回の地震の被害は比較的少なかった。この町では、国の重要文化財である通潤橋(江戸時代に造られた水路橋)が貴重な観光資源になっており、この石造りの巨大なアーチ橋は、大地震にも耐えてみせた。
同町役場・観光振興係の田中秀穂さんは、「熊本市街から南阿蘇村方面へ向かうには、通行止めの影響で、現在は“グリーンロード南阿蘇”が東西を結ぶ軸になっています。このルートは以前からライダーに人気のツーリングコースですが、大型車両などの交通量が増えていますから、いま南阿蘇村方面にツーリングするなら山都町を経由する国道218号も走りやすいですよ」と話す。
田中さんら職員は、地震発生後、住民のライフラインと観光客の安全の観点から、道路の被災状況を把握するためクルマが通行できない区域を走行調査した。この調査に使われたのが、2台のオフロードバイクだった。
「かなり狭い山道も住民にとっては重要なライフラインになっていますので、本当に隅々まで調査しました。未舗装路の得意なオフロードバイクでなかったら、たいへんな手間と時間がかかったと思います」と、田中さん。落石や崩落など危険な箇所を把握し、道路管理者と情報共有して速やかな通行規制や修復工事につなげた。バイクは大きな効用をもたらしたと評価できそうだ。
この2台のオフロードバイクは、大津町に生産工場のある本田技研工業株式会社から「災害に備え、町のために活用してほしい」と、今年2月に寄贈を受けたもの。田中さんは、「役場内にオフロードバイクが備えてある強みを大いに感じました。今後は、バイクと無線機を組み合わせることで、より効果的な情報収集や情報伝達を可能にして、いっそう仕事に活かしたい」という。また、「ライダーの皆さんにはこれからも熊本へ来ていただいて、道路の安全に十分注意してツーリングを楽しんでください」とも話していた。
写真1 危険個所を確認する山都町の職員
写真2 バイクは迅速な調査を可能にした
Search